うさぎを迎えて心配しなければいけないこと

 「先生、今兎を買ってきたんだけど、子供が抱いて落としちゃって・・・」
駆けこんできた太田さんの兎、左後股がブラブラしています。
兎は猫に比べて骨の質が3分の1、とても弱い骨です。
抱くときはしゃがんでね。

 「飼育当番になった娘が、兎に噛まれて帰ってきました。
傷が化膿するのが一番心配なので、お医者さんに診てもらった方がいいですか?」と、山本さんからの電話です。
パスツレラ、野兎病などの他の皮膚真菌症(カビ)などが人畜共通の病気です。
噛まれたり、ひっかかれたりしないようにして、触ったあとは手を洗ってね。


 田中さんちは友達をつくってあげようと、もう1羽買ってきたのはいいけれど、気が合わなくててケンカばかり。
耳ちぎられたり、鼻噛まれたり、今日なんて危うく目をやられるところでした。


 兎の心なんてなかなか読めなくて、人のほうが好きなのかもね。


 「キバが出てきたんですけど、診てもらえます?」沢田さんの兎は顔がヘンです。
アラアラ、下の前歯(門歯)がグーンと伸びて、鼻の頭につきそうです。
兎の歯は、一生伸び続けるので、うまくすりへらないと一大事です。
「やーだー、家の子の成績とパパの給料はちっとも伸びないのにィ」ママは怒っています。


 ちっとも大きくならなくて、と連れて来られた山川さんの仔兎、おしりがべっとり汚れています。
下痢です。早速、顕微鏡で検便してみると・・・
視野の中にコクシジウム(奇成虫・原虫)がブツブツ、いっぱい見えます。
下痢がひどくなって食欲も落ちてくると死ぬこともある怖い病気です。
飼ってきたら元気でも、すぐ動物病院で検便と健康診断してもらって飼い方のポイント、教わってね。

健康のチェック・ポイント

目) 
イキイキ・キラキラしていればOK。
目ヤニ・涙・眼脂がついている時は、結膜炎や涙管系のドライアイ(涙の分泌不全)などです。
あかんベーをさせて結膜の色もチェックしましょう。
赤いときは、結膜炎・角膜炎・ブドウ膜炎・ 内症などが考えられます。

鼻) 
鼻汁が出ているときはもちろん、出ていなくても鼻の周りの毛が汚れているときは、鼻汁の出ている証拠です。
スナッフルといって、パスツレラ菌などが増殖している可能性があります。
まれに鼻の中の腫瘍や歯の炎症が にまで及んで病気を起こすことがあります。


口) 
よだれが多かったり、口の周りの毛が汚れているときは、不正咬合といって、歯の咬み合わせが悪かったり、口内炎・口の中の腫瘍・中毒・てんかんなどが考えられます。

歯) 
前歯はきれいにそろっていますか?ウサギは歯が伸びすぎて不正咬合になると歯がななめに伸びたり、まるまったりして食餌を食べられなくなったり、舌や粘膜が傷ついて化膿したりします。


耳) 
耳の中を覗いて診て、黒や茶褐色のカスがあったり、カサカサしていたら、外耳炎です。
原因は、細菌や耳ダニです。耳が腫れているときは、耳血腫や腫傷です。
耳が傾いていたら内耳までパスツレラ菌などが増殖したり、エンセファリトゾーン(微包子虫)や腫傷などは原因の斜顎の場合があり、やっかいです。

おしり) 
おしりの周りの毛が汚れていたら、下痢や生殖器からの膿や出血が考えられます。
下痢はコウシジウムや腸炎が原因で、子宮腺癌や子宮畜膿症などで出血がみられます。

足) 
足の裏の毛がすれたり、血行が悪くなると炎症が起き、赤くなったり、ただれたり、かさぶたができたりし、飛節びらんになります。
爪が伸びすぎて折れる事故がとても多いので、注意しましょう。

皮膚) 
手でなでてみて毛並みやしこりがあるかないかよくみましょう。
普通に見えても、毛を逆立ててみて、しっとりしているか、脱毛してないかよくみましょう。
皮膚が赤かったり、フケが多かったり、かゆみがあるとき、皮膚がただれているときは、早めにみせにいきましょう。



うさぎを我家に迎えて考えなければならないこと

1)年間スケジュールをたてましょう。

一年を通して、どんな食事を与え、どんな場所で飼うかが、健康の大きなポイントになると思います。

春と秋は繁殖シーズン、夏は湿度が高く蒸れやすく兎は苦手。
冬はウィルスの病気や底冷えからくるストレスに気を付けてあげましょう。
兎は犬や猫に比べるとデリケートな動物なので、季節の変化に敏感な面もありますが、四季を楽しめると良いですね。


2)家族全員がホームドクターになってね。

家族みんなの賛成のもと飼い始めましたら、協力体制をつくってね。
小さな発見が大きな病気につながることもあるので、全員で観察できるといいですね。

3)動物病院になれましょう。

爪切りなどを兼ねて、定期的に動物病院で健康診断に行っていると怖がりのウサギも病院になれてきます。
病気になったとき治療も受けやすくなります。

4)兎時間をつくってね。

兎と遊ぶ時間、世話をする時間、病気になったとき病院に連れて行く時間、旅行や留守番のときのことも、今から考えておくと、慌てないですみます。

5)兎の居心地のよい環境をつくってね。

床の材質、部屋の温度や湿度、音の問題、毎日の食餌と水、かかりつけの先生からのアドバイスしてもらいましょう