IT革命


「君に望むこと」というアンケートを、十数人ものBFにしたことがある。「君」とは無論、私のことである。いちばん多かったのがIT革命、次が英語力アップ゚だった。今のままでいいというたいへん優しい人もいるにはいたけれど。
ワープロもパソコンもできず、メールがやっとの私。先日、隣のBFの机をみたら、彼は司会のタイムスケジュールを、終了時間や休憩時間まで入れて、さらっと決めていた。
まるでもうひとつの頭に仕事をやらせているようで、心底驚いた。できるヤツってこうして3人分くらいの仕事してるんだ、と感心したものだ。
そこで、できないことは人に頼る私は、彼に「この原稿、活字にしてちょうだい。ネットコラム立ち上げるの」と言った。
すると彼はその日から、二人分の仕事しかできなくなった。

街角ボランティア

ボランティアが盛んである。
無料奉仕で参加するのは、世の中に役立っている気分になれて充実感がある。
動物病院を始めて25年。
私たちも月1回、犬や猫を連れて近所の介護施設を訪れる。
介護者の方達が本当にどこまで私たちのことを受け入れて下さるか、自己満足に過ぎないのでは、と思うこともあった。
先日、その娘さんから、「母の昔の笑顔を見つけたんですよ。嬉しかったです。」と声をかけられた。


心の眼

糖尿病で白内障になった14歳の犬、ヤンキー。
飼い主のUさんが「先生、ヤンキーの目真っ白になっちまって見えないはずなのに、オレが帰ってくると、どこにもぶつからずに走ってくるんだよ。なんだかヤンキーには心の眼があるような気がするんだよ」
見えないものが見えてくる心の眼。
私たちも欲しいな。と思いました。
飼い主さんや動物たちに、こんな形でいろんなこと、教わったり温かい気持ちを頂いている私たち獣医師です。


3つの目

「君たちの目は、いくつあると思うか」獣医学科の教授が尋ねた。
「2つと思ったら大間違いだ。指先には第3の目があるんだぞ。この目で体中をこまなく触って、隠れていしこりや傷や分泌物をみつけるのが、獣医師の仕事のひとつなんだ。動物は話してくれない。だから具合の悪いところを、3つの目で探し当てるんだ」内科の1時間目、教授のこの第一声は今でも耳に残っていて、動物と接するたびにいきいきとよみがえる。


魅惑の熱帯魚

2月初旬獣医師の学会で沖縄へ行った。横浜との気温差は18度、桜の春だった。
ハムスター、兎、フェレットも診ていると現地で開業している、先輩に話すと、「これからは魚もみたら」と、美ら海(ちゅらうみ)水族館へ連れて行ってくれた。本土の水族館と違って、たくさんの熱帯魚の泳ぐそこは超カラフルで感動に目を見張る大パノラマだった。「こんなにきれいな魚たちが生き残った秘密はね、食べるとマズイからなんだよ」というせりふも妙に心に残ってしまった。


夢の原点

少女時代の夢がかない、獣医師になって25年がたつ。夢の原点はくじ引きで当たった雑種の子犬だった。その犬をロンと名づけて世話をした私は、両親、学校の先生の反対を押し切り、成人式の着物は要らないと言って獣医学部への入学金と授業料に充ててもらった。夢をかなえて現実となると、また次の夢を見つけなければならない。
さて、私の次の夢は、毎年世界獣医学会に参加すること。長寿の社会になったので100歳現役とするとあと53カ国へ行けることになる。


空飛ぶハムスター

我が家は動物病院。以前、「空飛ぶ絨毯」といテレビ番組があったが、空飛ぶハムスターだっている。「うっそー」と言われそうだけど、ホント。飼い主さんに「体重測りますので、ここへ乗せてください」と料理秤に移してもらうとき、いつもはおとなしい子が緊張のあまり?!育ての親にガブリ。あっ、と指を引っ込めると、次の瞬間、約50gのハムスターがピューンと宙を舞った。うまく受け止めることができてホッとしたが、打ち所によっては大変だった。−今、私たちの病院の一番の人気者は、このジャンガリアンハムスターなのである。小さいけれど、愛しさたっぷりつまっているから、嘘だと思ったら・・・飼ってみて。


老舗の暖簾

普通の会社と違って新入社員の人ってこない、動物病院の我が家。スタッフは銀婚式の私たち獣医師と、14年目になる獣医看護師と、動物のしつけを専門とする(行動学)代診の獣医師の四人である。そんな密日的な条件のせいか、気分はまだまだ若いつもりでいる。
さてある日、「先生のとこは老舗(しにせ)って評判よ。」と言われ、ハッと気づいた。親子二代目の患者さんがいて「母とよく一緒に・・・」と言ってくれたり、小学六年のときうちへ質問に来て、それが機縁で獣医師になった人が実習に来たり・・・。
「繁盛によって得た顧客の信用、愛顧」と辞書に載っていた「老舗」。ただ年を重ねるだけでなく、心の伝わる獣医療を暖簾にしてゆきたい。