馬の歯医者さん

「ここニュージーランドには、一人だけ。オーストラリアにも、二人しかいません。さあ、みんなに質問。私の仕事はいったい何でしょう?」

馬の獣医さん?はずれ。飼育係の人?はずれ。

わたしは、馬専門の歯医者さんです。この資格を取る前は、肉の加工工場に勤めていました。馬が大好きで、イギリスとアメリカで、一生けん命勉強して、7年かかって資格を取りました。

日本には、馬専門の歯医者さんは、一人もいません。それで一年に二回、ぼくは日本に行ってそのたびに、約二百頭の競走馬の歯を見ています。

私がおどろいたのは、この馬の歯医者さんはネ、病院も診療所もいらないんですって。三万ドル(約三百万円)の歯の診療道具(馬用に特別に作られた、大きな大きな道具です)があれば、世界中どこへでも出かけて行って、仕事ができるのです。世界一周、馬巡りの旅っていう訳。

馬に麻酔をかける必要がある時は、獣医さんと一緒に治療にあたるそうです。

エッ?!馬の歯は何本あるの?って。そう聞かれてみると、大学時代、解剖学の試験の時、覚えるのに苦労したっけ。何てったって動物によって歯の数がぜーんぶ、違うんだもの。

馬42本、牛32本、豚44本、犬42本、猫30本、兎28本、リス22本、フェレット36本、モルモット20本、ハムスター16本・・・。人は、知ってる?乳歯が24本、永久歯は32本です。同じ数だったらいいのに・・・とブツブツ神様に文句いいながら、皆で覚えたこと、今ふと思い出しました。

日本では、犬や猫など小動物の歯の治療は、私達、獣医さんがやります。馬の獣医さんは、歯科はやらないのかしら?世界に三人しかいない馬の歯医者さんは、日本に来て、どんなやり方をするのかなぁ。今度じっくり聞いてみたいと思いました。